「インターネット無料」の物件は、月々の通信費が節約でき、面倒な手続きも不要なため、お部屋探しの際に非常に魅力的に映ります。
しかし、その手軽さの裏には「通信速度が極端に遅い」「特定の時間帯だけ繋がりにくい」といった思わぬ落とし穴が潜んでいることも少なくありません。
特に、テレワークやオンライン授業、動画視聴、オンラインゲームなどを日常的に利用する方にとって、インターネット環境は生活の質を大きく左右します。
この記事では、インターネット無料物件でよくある失敗例とその原因、そして契約後に後悔しないために事前に確認すべきポイントを詳しく解説します。
なぜ人気?「インターネット無料」物件のメリット
インターネット無料物件が多くの人に選ばれるのには、明確な理由があります。月々の固定費削減はもちろん、新生活のスタートをスムーズにしてくれる手軽さが大きな魅力です。
ここでは、改めてインターネット無料物件が持つメリットを整理し、なぜこれほどまでに人気を集めているのかを解説していきます。
月々の通信費を節約できる
最大のメリットは、なんといっても経済的な負担が軽くなる点です。通常、個人で光回線などを契約すると、月々4,000円から6,000円程度の利用料金がかかります。
年間で考えると5万円以上の出費になるため、この費用が家賃に含まれているのは非常に大きな節約に繋がります。
特に、学生や新社会人など、少しでも固定費を抑えたい方にとっては見逃せないポイントです。
面倒な契約手続きや工事が不要
インターネット回線を個人で契約する場合、数ある通信会社の中からプランを選び、申し込み手続きを行い、場合によっては開通工事の立ち会いが必要になります。
引越しの忙しい時期にこれらの手続きをするのは、意外と手間がかかるものです。インターネット無料物件であれば、このような面倒な手続きは一切不要。
大家さんや管理会社がすでに契約を済ませてくれているため、入居者は手間なくインターネットを使い始めることができます。
入居したその日からインターネットが使える
通常、引越し後にインターネットを開通させるには、申し込みから工事まで数週間から1ヶ月以上かかることも珍しくありません。
その間、スマートフォンなどのデータ通信量(ギガ)を消費しながら過ごすことになり、不便を感じる方も多いでしょう。
インターネット無料物件なら、すでにお部屋に設備が整っているため、入居したその日からWi-Fiルーターなどを接続するだけで、すぐにインターネットを利用開始できます。
要注意!インターネット無料物件に潜む5つの落とし穴

多くのメリットがある一方で、インターネット無料物件には見過ごせないデメリットや注意点が存在します。これらの「落とし穴」を知らずに契約してしまうと、入居後に大きなストレスを抱えることになりかねません。
「安くて便利」という言葉の裏側をしっかりと理解し、自分のライフスタイルに合っているかどうかを慎重に判断することが重要です。
ここでは、実際に起こりがちなトラブルや不満点を具体的に見ていきましょう。
通信速度が遅くてストレスを感じる
最もよくあるトラブルが「通信速度が遅い」という問題です。
ウェブサイトの表示に時間がかかったり、SNSの画像読み込みが遅かったりする程度ならまだしも、高画質な動画のストリーミング再生が途中で止まる、オンライン会議で映像や音声が途切れる、オンラインゲームでラグが発生するなど、日常生活に支障をきたすケースも少なくありません。
快適な速度の基準は人それぞれですが、期待していたパフォーマンスが出ずにイライラしてしまう可能性は十分にあります。
夜間や休日に回線が不安定になる
「平日の昼間は問題ないのに、夜間や休日になると急に遅くなる」というのも、インターネット無料物件で頻発する現象です。
これは、多くの住民が同時にインターネットを利用する時間帯にアクセスが集中し、回線が混雑するために起こります。
仕事終わりのリラックスタイムに動画を楽しみたい、休日にオンラインゲームに没頭したい、といった方にとっては、最も使いたい時間帯に速度が低下するため、大きな不満に繋がります。
自分で好きな回線を選べない・追加できない
物件に導入されているインターネット設備は、大家さんや管理会社が指定した特定の通信事業者・プロバイダのものです。そのため、入居者は自分で好きな通信会社や高速プランを選ぶことができません。
「もっと速い回線を使いたい」「特定のゲームに特化した回線に乗り換えたい」と思っても、原則として変更は不可能です。
また、物件によっては「個別での回線引き込みが禁止」されている場合もあり、その際は備え付けの回線を使い続ける以外の選択肢がなくなってしまいます。
セキュリティ面に不安が残る場合も
物件によっては、全戸で同じパスワードのWi-Fiを共有しているなど、セキュリティ対策が十分でないケースも見受けられます。このような環境では、他の入居者に通信内容を傍受されるリスクがゼロとは言い切れません。
また、提供されるルーターが古く、最新のセキュリティ規格に対応していない可能性もあります。
個人情報や仕事のデータを扱う機会が多い方は、どのようなセキュリティ対策が取られているのかを確認しておくと安心です。
トラブル時のサポート体制が不十分なことがある
インターネットに不具合が生じた際、どこに問い合わせれば良いのかが分かりにくいケースがあります。
管理会社に連絡しても「専門外なのでわからない」と言われたり、回線事業者のサポートセンターに電話しても「契約者(大家さん)でなければ対応できない」と断られたりすることがあります。
トラブル発生時の問い合わせ先や対応フローが明確になっていないと、問題解決までに時間がかかり、不便な期間が長引いてしまう可能性があります。
なぜ速度が遅くなる?その仕組みと理由
インターネット無料物件で通信速度が遅くなりやすいのには、建物の設備構造に起因する明確な理由があります。
なぜ多くの人が利用する時間帯に不安定になるのか、その背景にある「配線方式」というキーワードを理解することが重要です。
ここでは、インターネット回線が各部屋に届くまでの仕組みを解説し、速度低下の原因となりやすいポイントを明らかにしていきます。
1本の光回線を建物全体で共有しているため
インターネット無料物件の多くは、建物まで引き込まれた1本の大元の光回線を、全戸で分け合って利用する仕組みになっています。これを「共用回線」と呼びます。
例えるなら、1本の太い水道管から各家庭に水を供給しているようなものです。利用者が少ない時間帯は快適に使えますが、多くの人が同時に蛇口をひねる(インターネットに接続する)と、水の勢いが弱まる(通信速度が低下する)のと同じ現象が起こります。
これが、夜間や休日に速度が落ちる最大の原因です。
建物内の「配線方式」が速度のボトルネックに
建物まで引き込まれた光回線を、各部屋までどのようなケーブルで繋ぐかという「配線方式」も、通信速度を左右する重要な要素です。
主な配線方式は以下の3つです。
-
光配線方式: 最も新しく、通信速度が速い方式。電柱から各部屋まで、すべて光ファイバーケーブルで接続されています。
速度が劣化しにくく、安定した高速通信が期待できます。 -
LAN配線方式: 共用部まで光ファイバーを引き込み、そこから各部屋まではLANケーブルで配線する方式。
一般的に光配線方式よりは速度が落ちますが、比較的高速な通信が可能です。 -
VDSL方式: 共用部まで光ファイバーを引き込み、そこから各部屋までは既存の電話回線(メタルケーブル)を利用して配線する方式。
電話回線がボトルネックとなり、上の2つの方式に比べて最大通信速度が大幅に低下します(一般的に最大100Mbps程度)。築年数の古い物件でよく見られます。
インターネット無料物件では、コストを抑えるためにVDSL方式が採用されているケースも少なくないため、注意が必要です。
契約前に絶対チェック!後悔しないための確認方法

入居してから「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためには、契約前の情報収集と確認が何よりも大切です。
不動産会社の担当者に質問したり、内見時に自分の目で確かめたりすることで、その物件のインターネット環境をある程度予測することができます。
ここでは、具体的な質問内容やチェックすべきポイントをリストアップしました。これらの情報を基に、総合的に判断しましょう。
不動産会社に確認すべき5つの質問
内見時や申込前に、不動産会社の担当者に以下の点を確認しましょう。明確な回答が得られない場合は、少し注意が必要かもしれません。
- 導入されている回線の種類と通信事業者・プロバイダはどこですか?
(例:「NTTのフレッツ光で、プロバイダは〇〇です」など) - 公表されている最大通信速度(理論値)はどれくらいですか?
(例:「最大1Gbpsです」など。ただし、これはあくまで理論値であり、実測値とは異なります) - 建物内の配線方式は何ですか?
(「光配線方式」「VDSL方式」など。担当者が把握していない場合もあります) - もし速度に不満があった場合、個人で別の光回線を契約・工事することは可能ですか?
(これが可能であれば、万が一の際の「保険」になります) - 過去に他の入居者から、インターネットの速度に関するクレームや相談はありましたか?
(正直に答えてくれるとは限りませんが、質問してみる価値はあります)
内見時に自分の目で確かめるポイント
内見時には、以下の点もチェックしておくと良いでしょう。
- LANポート(LANケーブルの差込口)の有無と位置を確認する
- Wi-Fiルーターを置く場所をイメージしておく(部屋の中心に近い場所が理想)
- 可能であれば、スマートフォンなどでWi-Fiの電波が飛んでいるか、電波強度はどれくらいかを確認する
ネットで物件名や回線事業者の評判を調べる
もし物件名や導入されている回線事業者が分かれば、インターネットで検索してみるのも有効な手段です。
「(マンション名) ネット 遅い」や「(回線事業者名) 評判」といったキーワードで検索すると、実際に住んでいる人や利用している人の口コミが見つかることがあります。
すべての情報が正しいとは限りませんが、判断材料の一つとして参考になります。
もしも速度が遅かったら?入居後の対処法
契約前にしっかり確認したつもりでも、実際に住んでみたら思ったより速度が出なかった、ということもあり得ます。そんな時に備えて、入居後に試せる対処法を知っておくと安心です。
簡単な設定の見直しから、管理会社への相談まで、いくつかのステップがあります。諦めてしまう前に、まずは自分でできることから試してみましょう。
自分でできる簡単な改善策
まずは、費用をかけずに試せる以下の方法を実践してみましょう。
Wi-Fiルーターの再起動
最も手軽で効果的な方法です。電源を一度抜き、数分待ってから再度差し込むことで、不具合が解消されることがあります。
Wi-Fiルーターの設置場所を変える
ルーターは、床から1〜2mの高さで、部屋の中心に近い、周りに障害物がない場所に置くのが理想です。電子レンジなどの電化製品の近くは電波干渉の原因になるため避けましょう。
有線LAN接続を試す
パソコンやゲーム機など、動かさない機器はWi-Fiではなく有線LANで接続することで、通信が安定し速度が向上する場合があります。
LANケーブルの規格を確認する
古い規格のLANケーブル(CAT5など)を使っていると、回線本来の速度が出せません。「CAT5e」や「CAT6」以上の規格のものに買い替えるだけで改善されることもあります。
管理会社や大家さんに相談する
自分でできる対策を試しても改善しない場合は、管理会社や大家さんに相談しましょう。
他の住民からも同様の相談が寄せられていれば、設備全体の増強や見直しを検討してくれる可能性があります。
いつ、どのくらいの速度しか出ないのか、どのような状況で困っているのかを具体的に伝えることが大切です。
個別にモバイルWi-Fiなどを契約する
建物の設備が原因で速度改善が見込めず、かつ個別の回線引き込みも禁止されている場合の最終手段として、工事不要で使えるモバイルWi-Fiやホームルーターを個人で契約する方法があります。
月々の費用はかかりますが、備え付けの回線よりは快適な環境を確保できる可能性があります。
まとめ
「インターネット無料」物件は、家賃以外の固定費を抑えられ、手続きも簡単なため非常に魅力的です。しかし、その裏には通信速度や安定性に関するリスクが伴うことを忘れてはいけません。
特に、仕事や趣味で安定したインターネット環境が不可欠な方にとっては、契約前の確認が後悔しないためのポイントとなります。
今回ご紹介したように、
- 回線の種類や配線方式を不動産会社に確認する
- 個別で回線を引けるか確認しておく
- 入居後の対処法を知っておく
といったポイントを押さえることで、多くのトラブルは回避できます。
「無料」という言葉だけに惹かれるのではなく、そのサービス内容をしっかりと見極め、ご自身のライフスタイルに本当に合った物件を選び、快適な新生活をスタートさせてください。
