お部屋探しをするとき、多くの人が譲れない条件として挙げる「日当たりの良さ」。
南向きの部屋や角部屋は人気が高く、誰もが一度は憧れるのではないでしょうか。一方で、北向きの部屋や1階の物件、窓の前に建物がある部屋など、日当たりが期待できない物件は敬遠されがちです。
しかし、「日当たりが悪い」という理由だけで、その物件を候補から外してしまうのは、少しもったいないかもしれません。
実は、日当たりが悪い部屋には、家賃が手頃なこと以外にも、住む人のライフスタイルによっては大きなメリットとなる隠れた魅力があるのです。
この記事では、日当たりが悪い部屋の具体的なデメリットと、それを上回る可能性のある意外なメリットを詳しく解説します。
そもそも「日当たりが悪い部屋」とは?
まず、「日当たりが悪い」とは具体的にどのような部屋を指すのでしょうか。
一般的には、太陽の光が室内に入りにくい部屋のことを言います。物件情報だけでは判断が難しい場合もありますが、主に以下のような条件に当てはまる部屋は、日当たりが悪い傾向にあります。
お部屋探しで「日当たりが悪い」と判断されやすい主な要因は、「方角」「階数」「周辺環境」の3つです。
部屋の向き(方角)
最も日当たりが悪いとされるのは「北向き」の部屋です。一日を通して直射日光が入りにくく、柔らかな安定した光が特徴です。
次に日当たりが短いのが「東向き」。朝日が差し込みますが、午後には暗くなります。逆に「西向き」は、午後に西日が強く差し込む特徴があります。
部屋の階数
一般的に、1階や2階などの低層階は、上層階に比べて日当たりが悪くなる傾向があります。
特に、周りに他の建物がある場合、その影になってしまい、太陽の光が遮られてしまうためです。
周辺環境
部屋の窓がどの方角を向いていても、窓のすぐ目の前に高いビルやマンション、隣家が迫っていると、太陽の光が遮られてしまいます。
また、敷地内に大きな木が生い茂っている場合も、日差しが入りにくくなる原因となります。内見時には、窓からの景色や周辺の建物の状況を必ず確認することが重要です。
知っておきたい!日当たりが悪い部屋のデメリット

日当たりが悪い部屋のメリットを知る前に、まずは一般的に言われるデメリットをしっかりと把握しておくことが大切です。
対策を立てるためにも、どのような問題が起こりうるのかを具体的に見ていきましょう。
1. 湿気がたまりやすくカビが発生しやすい
日当たりが悪い部屋の最大のデメリットは、湿気の問題です。太陽光による乾燥効果が期待できないため、室内に湿気がこもりやすくなります。
特に、梅雨の時期や冬場の結露は深刻な問題となりがちです。湿気が多い環境は、カビやダニの温床になります。
壁紙や家具の裏、クローゼットの中、水回りなどにカビが発生すると、アレルギーや喘息といった健康被害を引き起こす可能性もあるため、十分な注意が必要です。
2. 冬場は寒く、光熱費がかさむ
太陽の光は、部屋を暖める天然の暖房です。日当たりの悪い部屋は、その恩恵を受けにくいため、特に冬場は底冷えしやすく、室温が上がりにくい傾向があります。
暖房器具に頼る時間が長くなるため、電気代やガス代などの光熱費が、日当たりの良い部屋に比べて高くなってしまう可能性があります。
冷え性の人にとっては、冬の寒さが大きなストレスになるかもしれません。
3. 昼間でも部屋が暗い
日中の自然光が入りにくいため、天気の良い日でも部屋全体が薄暗く感じられることがあります。日中から照明をつけなければならず、気分が沈みがちになったり、電気代がかさんだりする原因にもなります。
また、体内時計が乱れやすくなるという指摘もあります。朝になっても太陽の光で自然に目覚めるということが難しく、生活リズムが不規則になりがちな人には向いていないかもしれません。
4. 洗濯物が乾きにくい
ベランダや窓際で洗濯物を干しても、太陽光が当たらないため乾きにくく、時間がかかります。特に厚手の衣類は、生乾きの嫌な臭いが発生しやすくなるでしょう。
その結果、浴室乾燥機を使ったり、コインランドリーを利用したり、部屋干し用の乾燥機を導入したりする必要が出てきて、余計な費用や手間がかかることがあります。
デメリットだけじゃない!日当たりが悪い部屋の意外なメリット
ここまでデメリットを挙げてきましたが、日当たりが悪い部屋には、それを補って余りあるほどの魅力的なメリットも存在します。
ご自身のライフスタイルと照らし合わせながら、その価値を見つけてみましょう。
1. 家賃が相場より安い傾向にある
最大のメリットは、やはり家賃の手頃さです。
同じ建物内でも、日当たりの良い南向きの部屋と、日当たりの悪い北向きの部屋とでは、数千円から一万円以上も家賃が違うケースは珍しくありません。
日当たり以外の条件(広さ、駅からの距離、築年数など)が同じであれば、日当たりが悪いというだけで、お得に住むことができます。
浮いた家賃を貯金に回したり、趣味や他の生活費に充てたりできるのは、大きな魅力と言えるでしょう。
2. 大切な家具や本が日焼けしにくい
強い日差しは、フローリングや畳、壁紙、そして大切な家具や本を色褪せさせてしまう原因になります。
お気に入りのソファやカーテン、集めている漫画や画集などが日焼けで劣化してしまうのは悲しいものです。日当たりの悪い部屋は、直射日光が入りにくいため、こうした日焼けによるダメージを防ぐことができます。
大切なインテリアやコレクションを長く良い状態で保ちたい人にとっては、むしろ好都合な環境です。
3. 夏は涼しく快適に過ごせる
冬は寒いというデメリットの裏返しになりますが、夏場は直射日光が入らない分、室温が上がりにくく、涼しく快適に過ごせるという大きなメリットがあります。
日当たりの良い部屋では、夏の日差しで室温が急上昇し、冷房を強力に稼働させないと過ごせないことも少なくありません。日当たりの悪い部屋なら、冷房の使用を最小限に抑えられ、夏の光熱費を節約できる可能性があります。
猛暑が厳しい日本の夏において、これは非常に価値のある利点です。
4. 在宅ワークや勉強に集中しやすい
日当たりの悪い部屋は、一日を通して光の変化が少なく、落ち着いた明るさを保ちます。
この静かで安定した環境は、実は在宅ワークや勉強、読書などに集中したい人にとっては最適です。窓の外の景色の変化や日差しの眩しさに気を取られることなく、自分の作業に没頭できます。
また、日中に家を空けることが多く、部屋にいるのは夜が中心というライフスタイルの人にとっても、日当たりの悪さはほとんど気にならないでしょう。
日当たりが悪くても大丈夫!快適に暮らすための工夫とアイデア

日当たりが悪い部屋のデメリットは、少しの工夫で十分にカバーすることが可能です。
ここでは、今日からでも始められる、快適な空間作りのための具体的なアイデアをご紹介します。
1. 照明を工夫して明るい空間を演出する
部屋の暗さは、照明計画で大きく改善できます。部屋全体を照らすシーリングライト一つだけでなく、複数の照明を組み合わせる「多灯分散」という考え方を取り入れてみましょう。
フロアライトやテーブルランプを置く
部屋の隅やソファの横に間接照明を置くことで、空間に奥行きと立体感が生まれます。柔らかな光がリラックス効果をもたらします。
調光・調色機能付きのLED照明を選ぶ
時間帯や気分に合わせて、光の色(暖色系・白色系)や明るさを変えられる照明がおすすめです。
日中は活動的な白色系の光、夜はリラックスできる暖色系の光というように使い分けることで、生活にメリハリが生まれます。
ライティングレール(ダクトレール)を活用する
天井にレールを取り付ければ、好きな位置にスポットライトやペンダントライトを追加できます。
壁に光を当てて部屋を広く見せたり、お気に入りのアートを照らしたりと、自由な照明演出が楽しめます。
2. インテリアを「明るい色」と「光を反射する素材」で統一する
部屋の印象は、インテリアの色使いで大きく変わります。壁や床、カーテン、家具などの面積の大きい部分を、白やアイボリー、ベージュといった明るい色で統一すると、少ない光でも部屋全体が明るく、広く感じられます。
さらに、鏡を壁に飾るのも効果的なテクニックです。窓の対面の壁などに設置すると、外からの光を反射して部屋の奥まで届けてくれます。
また、家具を選ぶ際は、背の低いものを選ぶと圧迫感がなくなり、空間がすっきりと見えます。
3. 日陰に強い観葉植物で彩りをプラスする
「日当たりが悪いと植物は育てられない」と思っていませんか?実は、日陰や半日陰の環境を好む「耐陰性」の強い観葉植物はたくさんあります。
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おすすめの観葉植物
ポトス、サンセベリア、モンステラ、アグラオネマ、テーブルヤシなど。
緑が一つあるだけで、部屋の雰囲気が生き生きとし、癒やしの効果も期待できます。植物を育てる自信がない方は、手入れが簡単なフェイクグリーンを取り入れるのも良いでしょう。
4. 湿気・カビ対策を徹底する
日当たりが悪い部屋で最も重要なのが湿気対策です。カビを発生させないために、以下のことを習慣にしましょう。
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こまめな換気
2ヶ所以上の窓やドアを開けて、空気の通り道を作るのが基本です。難しい場合は、換気扇を常に回しておくだけでも効果があります。 -
除湿機の活用
特に梅雨の時期や洗濯物を部屋干しする際は、除湿機が非常に役立ちます。 -
クローゼットや押し入れの対策
荷物を詰め込みすぎず、すのこを敷いて空気の通り道を作りましょう。除湿剤を定期的に交換することも忘れずに。 -
結露対策
冬場は窓の結露をこまめに拭き取りましょう。結露防止シートを貼るのも有効です。
5. サーキュレーターで空気を循環させる
サーキュレーターは、部屋の空気を効率的に循環させるための家電です。
部屋の隅やエアコンの対角線上に置き、天井に向けて風を送ることで、室内の温度ムラや湿気のよどみを解消できます。
冬は暖房の暖かい空気を、夏は冷房の冷たい空気を部屋全体に行き渡らせることができるため、光熱費の節約にも繋がります。
また、部屋干しした洗濯物に直接風を当てれば、乾燥時間を大幅に短縮できます。
まとめ:日当たりは「悪い」のではなく「自分に合っている」かを見極めよう
部屋探しにおいて、日当たりの良さは確かに魅力的な条件の一つです。しかし、それが全てではありません。
日当たりが悪いとされる部屋には、「家賃が安い」「家具が焼けない」「夏涼しい」「集中できる」といった、見逃せないメリットがたくさんあります。
湿気や寒さといったデメリットも、換気の習慣化や便利な家電の活用、インテリアの工夫によって、十分に乗り越えることが可能です。
大切なのは、物件の条件を一面だけで判断せず、ご自身のライフスタイル(家にいる時間帯、休日の過ごし方、何を大切にしたいか)と照らし合わせて、多角的に検討することです。
「日当たりが悪い部屋」ではなく、「自分にとって快適な落ち着いた光の部屋」と捉え直してみることで、理想の物件に出会える可能性はぐっと高まるはずです。
ぜひ、次の部屋探しの際には、これまで候補から外していた北向きや1階の部屋にも、一度目を向けてみてはいかがでしょうか。
