「連帯保証人がいるのに、どうして保証会社の利用が必須なの?」「保証料って、いったい何にいくら支払うのだろう?」
お部屋探しをしていると、多くの物件で「保証会社利用必須」という条件を目にします。連帯保証人を立てられる方にとっては、なぜ二重の保証が必要なのか疑問に思うかもしれません。
また、初めて一人暮らしをする方にとっては、保証料が初期費用に加わることで、負担に感じることもあるでしょう。
この記事では、そんな賃貸契約における保証会社の役割について、基本的な部分からわかりやすく解説します。
なぜ保証会社が必須とされるのか、保証料の相場や仕組み、そして気になる審査のポイントまで、お部屋探しを始める前に知っておきたい情報をまとめました。
賃貸契約で保証会社が必須なのはなぜ?
最近のお部屋探しでは、ほとんどの物件で保証会社の利用が条件となっています。以前は連帯保証人を立てるのが一般的でしたが、時代とともに賃貸契約の形も変化してきました。
なぜ今、これほどまでに保証会社の存在が重要視されているのでしょうか。その背景には、大家さんや管理会社が抱える家賃滞納リスクへの備えと、社会の変化が大きく関係しています。
ここでは、連帯保証人だけでは不十分とされる理由や、保証会社を利用することが貸主側・借主側双方にどのようなメリットをもたらすのかを解説します。
連帯保証人だけではダメな理由
連帯保証人は、借主が家賃を支払えなくなった場合に、代わりに支払い義務を負う重要な役割を担います。
しかし、その連帯保証人自身が高齢であったり、収入が不安定であったりすると、いざという時に支払い能力がないケースも考えられます。また、関係性の変化から、支払いを拒否されるといったトラブルも少なくありません。
さらに、2020年4月の民法改正により、連帯保証契約を結ぶ際には、保証する金額の上限である「極度額」を書面で定めなければならなくなりました。
これにより、連帯保証人が負う責任がより明確になった一方で、その責任の重さから、気軽に引き受けてくれる人が見つかりにくくなったという側面もあります。
こうした背景から、より確実に家賃を回収できる保証会社の利用が、大家さんにとって不可欠なものとなっているのです。
大家さん・管理会社にとってのメリット
大家さんや管理会社にとって、保証会社を利用する最大のメリットは、家賃滞納リスクを大幅に軽減できることです。
万が一、入居者が家賃を滞納しても、保証会社が立て替え払いをしてくれるため、安定した賃貸経営を続けることができます。
また、滞納が発生した際の督促業務も保証会社が行ってくれます。入居者への連絡や交渉は、精神的にも時間的にも大きな負担となるため、これを専門の会社に任せられるのは大きな利点です。
さらに、保証会社の入居審査は、客観的な基準で支払い能力を判断してくれるため、安心して物件を貸し出すための重要な判断材料にもなります。
入居者にとってのメリット
保証会社の利用は、費用がかかるため入居者にはデメリットしかないように思われがちですが、実はメリットも存在します。
最も大きなメリットは、連帯保証人を頼める親族や知人がいない場合でも、お部屋を借りられるようになる点です。核家族化や人間関係の希薄化が進む現代において、連帯保証人を見つけるのは簡単なことではありません。
保証会社を利用することで、このハードルをクリアでき、お部屋探しの選択肢が大きく広がります。
また、「親や親戚に迷惑をかけたくない」と考える方にとっても、保証会社の利用は精神的な負担を軽減してくれます。
保証料を支払うことで、気兼ねなく自分の住まいを確保できるのは、大きなメリットと言えるでしょう。
気になる保証料の相場は?料金の仕組みを解説
保証会社の利用にあたって、最も気になるのが「保証料」ではないでしょうか。
この保証料は、物件を借りる際の初期費用の一部として、また契約更新時にも発生する費用です。料金体系は保証会社やプランによって様々で、一見複雑に感じるかもしれません。
しかし、その仕組みを理解しておけば、資金計画も立てやすくなります。
ここでは、保証料の主な種類である「初回保証料」と「更新保証料」について、それぞれの相場と計算方法を具体的に解説していきます。
初回保証料の相場
初回保証料は、賃貸借契約を結ぶ際に最初に支払う保証料のことです。一般的には、家賃や共益費(管理費)などを含めた「月額総賃料の50%〜100%」が相場とされています。
例えば、月額総賃料が10万円の物件で、保証料率が50%であれば、初回保証料は5万円となります。
また、保証会社によっては、料率ではなく「最低保証料」が設定されている場合もあります。これは、家賃が低い物件でも、最低限の保証料(例:20,000円)が必要になるというものです。
物件情報に記載されていることが多いですが、詳細は不動産会社に確認するようにしましょう。この初回保証料は、敷金や礼金などと同じく、契約時の初期費用として一括で支払うのが一般的です。
更新保証料の相場
更新保証料は、賃貸契約を更新する際に発生する費用です。
契約期間が満了し、引き続き同じ物件に住む場合に、保証契約を継続するために支払います。更新のタイミングは、1年ごと、または賃貸契約の更新と同じ2年ごとが一般的です。
料金の相場としては、1年ごとに10,000円程度の定額を支払うプランや、2年ごとに月額総賃料の10%〜30%を支払うプランなどがあります。
例えば、2年更新で10,000円というプランもあれば、1年更新で月額総賃料の10%を支払うというプランもあります。契約時には初回保証料に目が行きがちですが、この更新保証料も長期的に見ると大きな出費となります。
契約前に、更新の有無、タイミング、金額を必ず確認しておくことが重要です。
保証料は誰が払う?いつ払う?
保証料を支払うのは、物件を借りる「入居者(賃借人)」です。
大家さんや管理会社が保証会社と契約を結びますが、そのサービスを利用するための費用は入居者が負担する形となります。
支払うタイミングは、前述の通り、初回保証料は契約時の初期費用と合わせて不動産会社や管理会社に支払います。
更新保証料については、契約更新の時期が近づくと、保証会社や管理会社から通知が届き、指定された期日までに支払う流れが一般的です。
支払いを忘れると保証契約が解除されてしまう可能性もあるため、注意が必要です。
保証会社の役割と保証範囲
保証会社は、単に滞納家賃を立て替えるだけの存在ではありません。その役割は多岐にわたり、保証してくれる範囲も契約内容によって異なります。
保証会社が具体的に何をしてくれるのか、そしてどこまでの費用をカバーしてくれるのかを正しく理解しておくことは、万が一のトラブルに備える上で非常に重要です。
ここでは、保証会社の主な保証内容と、もし家賃を滞納してしまった場合にどうなるのか、その後の流れについて詳しく見ていきましょう。
主な保証内容
保証会社が保証する範囲は、契約プランによって異なりますが、一般的には以下のような項目が含まれます。
- 月々の家賃、共益費、管理費、駐車場代など
- 契約更新時に支払う更新料
- 退去時の原状回復費用やハウスクリーニング代(上限あり)
- 家賃を滞納した場合の遅延損害金
- 契約違反による違約金
- 退去予告を怠った場合の損害金
- 鍵の交換費用など
特に、家賃だけでなく、高額になりがちな原状回復費用まで保証範囲に含まれているかは重要なポイントです。
どこまでが保証の対象となるのか、契約前に保証委託契約書の内容をしっかりと確認しておきましょう。
保証会社が立て替えた家賃はどうなる?
もし入居者が家賃を滞納してしまった場合、保証会社が大家さんに対してその家賃を立て替え払いします。これにより、大家さんは収入が途絶える心配がありません。
しかし、これは入居者の支払い義務がなくなったわけではありません。「保証会社が払ってくれたから安心」というわけではなく、入居者は立て替えてもらった家賃を、今度は保証会社に対して返済する必要があります。
この返済を怠ると、保証会社から厳しい督促を受けることになります。また、滞納の事実が信用情報機関に記録され、将来的にクレジットカードの作成やローンの契約が困難になる可能性もあります。
保証会社の立て替えは、あくまで一時的なものであり、最終的な支払い責任は入居者自身にあることを忘れてはいけません。
保証会社の審査とは?種類と見られるポイント
保証会社を利用するためには、必ず審査を通過する必要があります。
この審査は、入居審査の中でも非常に重要な部分を占めており、「この人に部屋を貸しても、きちんと家賃を支払っていけるか」という支払い能力を判断するために行われます。審査基準は保証会社によって異なり、大きく分けて3つの種類が存在します。
ここでは、それぞれの保証会社の特徴と、審査で具体的にどのような点がチェックされるのか、そして審査に不安がある場合の対策について解説します。
保証会社の種類
保証会社は、その成り立ちや審査の際に参照する情報によって、主に「信販系」「LICC系」「独立系」の3つに分類されます。
信販系保証会社
クレジットカード会社やその関連会社が運営しています。
個人の信用情報(CICやJICCなど)を照会して審査を行うため、過去にクレジットカードやローンの支払い遅延、自己破産などの金融事故があると、審査通過は非常に厳しくなります。
逆に、これまで延滞なく支払いを行ってきた実績があれば、審査に通りやすい傾向があります。審査の難易度は最も高いと言えます。
LICC系(全国賃貸保証業協会)保証会社
LICC(全国賃貸保証業協会)に加盟している保証会社です。この協会内では、加盟会社間での家賃滞納情報や過去のトラブル履歴が共有されています。
そのため、過去にLICC系の保証会社を利用して家賃を滞納したことがあると、他の加盟会社の審査にも影響が出る可能性があります。
独立系保証会社
上記のどちらにも属さず、独自の基準で審査を行う保証会社です。
信用情報やLICCの情報を参照しないため、過去に金融事故や家賃滞納があった場合でも、現在の支払い能力が認められれば審査に通る可能性があります。
信販系やLICC系に比べて審査は比較的柔軟ですが、その分、保証料が割高に設定されていることもあります。
審査でチェックされる主な項目
保証会社の審査では、申込書に記載された内容をもとに、様々な角度から支払い能力が評価されます。
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年収と家賃のバランス:一般的に、年間の家賃総額が年収の3分の1以内に収まっているかが一つの目安です。
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職業と勤続年数:安定した収入が見込める職業か、すぐに辞める可能性が低そうか、といった点が評価されます。正社員や公務員は有利で、勤続年数が長いほど信用度は高まります。
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過去の滞納歴:信販系はクレジットやローン、LICC系は家賃の滞納歴を重視します。
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申込書の内容:記入漏れや虚偽の記載は、信用を失い審査に落ちる原因となります。正確に丁寧に記入することが大切です。
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本人確認電話での対応:申込書に記載された勤務先に在籍確認の電話がかかってくることがあります。また、申込者本人にも意思確認の電話がある場合があります。その際の受け答えの態度や人柄も見られています。
審査に不安がある場合の対処法
もし収入が不安定であったり、過去に滞納歴があったりして審査に不安を感じる場合は、以下のような対策を検討してみましょう。
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収入を証明する書類を準備する
源泉徴収票や確定申告書の控え、給与明細など、収入を客観的に証明できる書類をきちんと提出しましょう。 -
申込書は正直かつ正確に記入する
審査に通りたいからといって、年収や勤続年数を偽ってはいけません。虚偽の記載は必ず発覚し、審査に落ちる原因となります。 -
身の丈に合った家賃の物件を選ぶ
家賃が高ければ高いほど、求められる年収のハードルも上がります。まずは無理なく支払える範囲の物件を選ぶことが重要です。 -
独立系の保証会社が使える物件を探す
不動産会社の担当者に、審査に不安がある旨を正直に伝え、独立系の保証会社を利用できる物件を紹介してもらうのも一つの方法です。誠実な対応をすることで、担当者も親身にサポートしてくれるでしょう。
まとめ
今回は、賃貸契約における保証会社の役割や必要性、保証料の仕組み、そして審査のポイントについて解説しました。
- 保証会社の利用は、家賃滞納リスクを軽減したい大家さんと、連帯保証人がいなくても部屋を借りたい入居者の双方にとってメリットがあり、現在の賃貸市場では不可欠な存在となっている。
- 保証料には、契約時に支払う「初回保証料」と、契約更新時に支払う「更新保証料」があります。初期費用だけでなく、将来的な費用も考慮して資金計画を立てることが大切。
- 保証会社には「信販系」「LICC系」「独立系」などの種類があり、それぞれ審査基準が異なります。自分の状況を理解し、正直に不動産会社に相談することが、スムーズなお部屋探しにつながる。
保証会社の仕組みを正しく理解することは、納得のいくお部屋探しをするための第一歩です。この記事で得た知識をもとに、ぜひ安心して不動産会社に足を運び、あなたの理想の住まいを見つけてください。
